ここでは、金属の熱処理方法のひとつである焼入れについてわかりやすく解説しています。焼入れは、金属を一定の硬さにしたいときなどに用いられています。金属の研磨と非常に関わりが深い処理といえるでしょう。概要を正しく理解しておくことが重要です。
一定温度以上に金属を加熱してから適切な方法で冷却することにより、その性質を変化させることを熱処理といいます。「焼入れ」は、「焼もどし」「焼なまし」「焼ならし」とならぶ熱処理のひとつです。具体的には、変態点以上の温度まで金属を加熱して、一定時間を経てから冷やす熱処理を指します。変態点は、変態する温度、すなわち組織変化が起こる温度です。ちなみにJISの加工記号では、焼入れをHQとあらわします。HQのHは「Heat treatment(熱処理)」、Qは「Quenching(焼入れ)」を意味します。
焼入れの主な目的は金属を硬くすることです。焼入れ後の硬さは、金属に含まれる炭素量などから影響を受けます。硬化の程度が大きいものは焼入れ性が良い、硬化の程度が小さいものは焼入れ性が悪いと評価されます。前者は冷却に使用する媒体を選びませんが、後者は急速に冷却しないと目的の結果を得られないため冷却に使用する媒体を選びます(例えば水など)。また、焼入れを行うものが大きくなると、冷却に時間がかかる点にも注意が必要です。大きなものに対して焼入れを行う場合は、この点も加味して工程を設計しなければなりません。
焼入れを行うと金属の硬度が高くなる一方で、衝撃に弱くなることも押さえておきたいポイントです。脆さに対処するため、焼入れとあわせて焼もどしを行うケースが少なくありません。焼もどしは、変態点を超えないように金属を再加熱することで硬度を下げるとともに粘りを増加させる熱処理です。この熱処理により、衝撃が加わっても割れにくくすることや機械部品として使用しやすい硬さを実現することができます。
ここからは焼入れした金属における研磨加工の事例を紹介します。
7mm×7mm×3mmの微細部品に研磨加工を施した事例です。材質は、SUS440C(HRC54)となっています。微細部品でありながら5面方向から精度穴とM2ネジ加工の指示を受けている点がポイントです。焼入れ後の切削加工は難しいため(=高硬度材)、焼入れ前後の硬度変化を踏まえて工程を組んでいます。
具体的には、焼入れにより0.01mm程度の寸法変化が生じるため、荒加工とネジ切り加工は焼入れ前にマニシングセンタを用いて実施しています。板厚は、研磨機による焼入れ後の加工で0.2mm±0.002mmに仕上げています。
鋼SKS3を用いた加工物に対して研磨加工を施した事例です。サイズは、55mm×60mm×30mmとなっています。鋼SKS3の特徴は、焼入れ後の変形が少ないことです。この事例では、真空焼入れを行っています。サブゼロ処理で寸法の安定化と機械的性質の向上を図ったのち、円筒研磨と平面研磨で高精度な寸法公差などを実現しています。
安心して任せられる
研磨会社3選
三陽工業
対応領域
計8
ISO取得
主な取引先
川崎重工業/三菱重工業/ダイハツ工業/日産自動車/ブリヂストン/三菱日立パワーシステムズ
大堀研磨工業所
対応領域
計5
ISO取得
主な取引先
オークマ/ヤマザキマザック/コマツNTC/川崎重工業/三菱重工業
東京ステンレス研磨興業
※ISO9001認定を取得、公式サイト上に研磨事例が掲載されている会社の中から、対応領域の種類が多い3社を選定(2021年6月調査時点)
※情報参照元:三陽工業(https://sanyou-ind.co.jp/company/)、大堀研磨工業所(http://www.ohorikenma.co.jp/quality.html)、東京ステンレス研磨興業(http://www.tskenma.com/company/history.php)