このページでは、表面粗さについて、さまざまな視点から解説しています。表面粗さの定義や測定方法、パラメーターの種類、測ることができる機能性、粗さの程度、粗さを少なくする方法などについて、わかりやすくまとめました。
表面粗さとは、文字通り、製品の表面の粗さのことです。弾力性や塗装などを除いた「商品表面の性状」を数値で表すことが可能です。表面粗さは、例えば、精密さが重要なポイントとなる半導体ウェハーやハードディスクの用基板など、精密さが要求される製品において、特に重要なポイントとなります。
金属製品を製造する場合、金属のかたまりをフライス加工や旋盤加工していく方法がとられることが一般的です。その際、鋳造の方法によっては表面に凹凸ができてしまいますし、フライス加工や旋盤加工をすれば表面にフライスや工具の跡がついてしまいます。そのような状態になっている製品の表面粗さ少なくしたいときに研磨を行います。
ただ、研磨が不必要であるケースも少なくありません。それは、製品に例えば手触りのよさを残したい場合や、あるいは表面粗さがその製品の性能に影響しない場合などです。ですから、表面粗さの設定については、製品の設計をおこなうときに、あらかじめ決定しておくのが通常です。
表面粗さの定義はひとつではありませんが、Raという記号を用いる「算術平均粗さ」が、代表的なものとして知られています。ここでは、その場合の定義をみていきましょう。
ワークの被測定面に対して直角となる面を切断すると、その断面は、波打っている状態になっている場合が多いです。波打っている曲線は「断面曲線」と呼ばれます。波打っている状態、つまり凸凹が、少ない状態であればあるほど、表面粗さが少ないということになるわけです。また、「粗さ曲線」という言葉がありますが、これは、断面曲線から大きなうねり成分を除外した曲線のことを意味しています。
算術平均粗さの求め方は次のとおりです。
粗さ曲線からその平均線の方向に「測定長さ」を切り取り、粗さ曲線の上下両方の波の高さの平均にあたる部分に平均線を引き、その上下の波のトータル面積について、それぞれの絶対値を出します。そして、ふたつのトータル面積を合わせたものを「測定長さ」で割ります。
表面粗さを測定するには、主に2つの方法があります。ひとつは、蝕針を使う「接触式測定方法」で、もうひとつはレーザーなどで測定する「非接触式測定方法」です。それぞれについてみていきましょう。
表面粗さを測定したい対象物に触針の先端を接触させ、表面の状態を測ります。触針の上下方向の変化や変位を検出することで、対象物の表面についてのデータがわかります。
この測定方法のメリットは、長い距離を測れることです。また、直接表面に触れるので、検出される形状波形が明確であることも、大きなメリットだといえるでしょう。この方法で表面粗さを解析するために用いられる規格は「JIS B 0601(ISO4287)」です。
非接触測定方法では、触針ではなく、レーザーや光を使用します。非接触測定方法における原理にいくつか違いがあるため、測り方の方式もひとつではありません。また、形状の測定をおこなう方式もあるため、対象物を三次元のデータで表すことも可能です。
非接触測定方法がもつ大きなメリットは、対象物に触針で触れる必要がないため、触針の摩耗を気にする必要がなく、さらに、対象物への圧痕・最小測定値の制限などの問題もないため、精度の高い測定が可能になることです。この方法で表面粗さを解析する際に用いられる規格は「ISO 25178」です。
表面粗さの単位は、測定する対象物によって、異なるパラメーターを用います。主なものとして「Ra」「Rz」「Rq」の3種類があげられます。一般的にはRaが使われる場合が多いです。ただ、少しの漏れもゆるされないような真空装置などが対象物である場合には、Rzが使用されます。
単位は「μm」です。粗さ曲線の一部を、基準の長さLとし、抜き取ります。Lの区間の平均値mから「どの程度凹凸が激しいか」ということを表した平均値が、すなわちRaの値となります。
平均値を用いるパラメーターなので、キズなどの大きな凸凹があったとしても、数値が影響を受けにくいのが特徴です。比較的安定した表面粗さを測定できます。
単位はRaの場合と同様、「μm」を用います。これは、最大高さと呼ばれる高さ方向のパラメーターです。その値は、粗さ曲線の一部を基準の長さとして、その区間内で最も深い部分と最も高い部分を合わせて求めることができます。
このパラメーターの特徴は「大きなキズなどがあるかないか」を調べられることです。Rzは、上述のRaとあわせて、品質安定の指標のひとつとして利用されているパラメーターです。
このパラメーターは「二乗平均平方根粗さ」と呼ばれています。山と谷がある表面粗さのうち、高さ方向である山側の平均値を出すためのパラメーターです。
表面粗さ・面粗度の測定は、加工品の仕上がり状態や外観品質などを管理するためだけでなく、製品寿命や機械効率を管理する上でも、非常に重要です。また、以下のような機能性を知ることもできます。
表面粗さを適切に判断するためには、製品の性質などをしっかりと考慮する必要があります。機械設計の技術者であれば、経験を一定以上積むことで、必要な面粗さがだんだんとわかるようになっていきます。ここでは、表面粗さを4段階にわけて、それぞれに適する場合についてみていきましょう。
ある程度大きい表面粗さでも問題ないものの例としてあげられるのは、大口径の下水管の表面・大口径のバルブの表面・自動車のシャーシ・産業機械のベースなどです。これらに共通するのは、それほど人目につかないものであるという点や、コスト面から塗装でカバーするほうが適しているものであるという点です。
表面粗さをふつう仕上げ、つまり中程度にするものの例としてあげられるのは、手触りや肌触りがポイントとなる工具や日用品などです。また、一般的な機械部品も、中程度に仕上げられる場合が多いです。
鏡面仕上げか、あるいはそれに近い程度の仕上げをしたい場合は、表面粗さを小さくします。例としてあげられるのは、歯車の歯があたる部分や、エンジンシリンダーの内面などです。エアシリンダーやアクチュエーターなどの摺動面に摩擦が生じると、ベアリングの効率がダウンしたり、壊れたりしてしまう可能性があるというのが、その理由です。
また、自動車のボディーを研磨する場合も、表面粗さを小さくすることが大切です。小さくしないと、塗装をする際、塗料の乗りが悪くなってしまうなどの問題が生じます。
精密研磨や超精密研磨をかけて対象物の表面粗さをかなり小さくしなければならない例として、次の2つの場合についてみていきましょう。
グラビア印刷用のシリンダーには、まず鉄芯に銅メッキをほどこし、次にその銅メッキに図柄を彫り、さらにクロムメッキをほどこす流れで工程が進められます。それぞれの工程を終えるたびごとに、シリンダーに研磨がかけられます。それは、シリンダーにキズなどがあると、印刷のクオリティーが下がってしまうからです。印刷がかつてよりも精緻さを増していることを背景に、グラビア印刷用シリンダーの表面粗さおよび直径精度は、厳しく管理されるようになっています。そのため、シリンダーには鏡面研磨レベルかそれを超える表面粗さの小ささが求められているわけです。
極めて小さい表面粗さが求められます。その理由についてみてきましょう。
かなり微細な回路を半導体ウェハーに焼き付けなくてはならないので、たくさんの光を集める必要があります。そのためには、大きなレンズを使うことになるわけですが、大きなレンズは焦点深度が薄く、ピントが合う範囲がとても小さいです。よって、もし半導体ウェハーに少しでも凸凹があるとその影響は大きくなってしまうので、非常に小さい表面粗さが必要となるわけです。
それぞれの対象物に適した砥石を選択して使用することが大切です。たとえば、炭化ケイ素の砥石を、硬度の高いワークに使ってしまうと、思い通りに表面粗さを少なくすることはできません。ですから、コストは上がってしまいますが、ダイヤモンドやCBNなどの砥石を選ぶようにしましょう。逆に、硬度の低いワークにダイヤモンドやCBNなどの砥石を使うのは、コスト面においてもったいない場合もあります。
また、精密研磨や超精密研磨をする場合には、表面粗さを極限まで少なくし、かつ、コストを下げることも考えなくてはなりません。現在では、クリスタル砥石など、そういった場合に適した砥石も開発されています。
研磨以外の場合において、表面粗さを少なくするための方法をみていきましょう。
砂型の砂の粒度を小さくすることで、鋳物の表面の凹凸も小さくなっていきます。表面粗さが少なくなっていれば、鋳造のあとにおこなう研磨加工においても、負担を減らすことが可能です。
「仕上げ削り」をするのがおすすめです。これは、荒削りをおこなったあと、工具の送り速度を落とし、表面だけを削る工程です。また、そうしておくことで、研磨加工の負担をも軽減することができます。
金型の内側の表面粗さは、樹脂の表面粗さに強く影響するので、金型研磨を必ずおこなうことが求められます。ですから、金型研磨をおこなわずに、射出成型をしたあとに研磨をするのは、とても非効率だといえます。
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