ここでは、研磨方法の一種であるバレル研磨の特徴や種類について、詳しく解説します。
バレル研磨とは、バレル容器に工作物や研磨石、コンパウンド、水を入れ、回転させたり振動を与えながら研磨する加工技術のことです。バレル容器を機械で回転もしくは振動させることで工作物と研磨石が擦れ合いますが、この時に生じる摩擦で工作物を研磨することができます。
製造工程の最終段階の仕上げを担う重要な技術であり、工業の世界では欠かせないものです。またバレル研磨は、バリの除去や角のR付け、表面の平滑仕上げから光沢を持たせる鏡面仕上げ、スケール取りなど、工作物の仕上げを一括処理できるのも特徴で、自動車や電子機器など多くの業界で導入されています。
バレル研磨は他の研磨方法とどんな違いがあるのでしょうか?メリット・デメリットから特徴を解説します。
バレル研磨最大のメリットは、一度にたくさんの金属を同時に研磨できること。バレル研磨の仕組みは、簡単にいえば洗濯機と同じです。一度にたくさんの洗濯物を洗浄できる洗濯機と同じく、バレル研磨は槽に入れた金属を一括で研磨できます。
同じ物理的な研磨方法であるバフ研磨にくらべ、安く大ロットでの金属研磨・バリ取りができる点がバレル研磨の特徴です。
研磨石とコンパウンドの割合、バレルを動かす時間など、研磨をする条件が同じであれば研磨後の品質がほぼ同じにできます。
手作業での研磨を行う場合、大ロットでの研磨だと品質を全て均一に保つのは難しいところ。バレル研磨ならほぼ同じ品質に仕上がるため、大ロットでの研磨に向いている方法といえます。
機器や研磨石の種類によっては、高いレベルの研磨もできます。大ロットの製品を安く、鏡面仕上げに近いレベルに仕上げられるので、コスパのよい研磨方法といえるでしょう。
利点の多いバレル研磨ですが、一方で不得意とされる点も存在します。デメリットについても見ていきましょう。
ワークスケールとは、簡単にいえば研磨をする素材の大きさのこと。研磨をする素材のサイズが大きすぎると、研磨槽の中に素材が入らず、研磨ができない場合があるのです。
ワークスケールの大きいものをバレル研磨するには、製品がすっぽり入る大型のバレル研磨機が必要。しかし、研磨会社によっては大型のバレル研磨機を持っていない可能性もあり、大型の製品の場合研磨を断られる可能性があります。
大きすぎてバレル研磨ができない場合、バフ研磨によって対応してもらうとよいでしょう。
バレル研磨は製品と研磨石をこすり合わせることで磨く研磨方法です。形状がシンプルなら製品を全方位から磨けますが、形状が複雑だと研磨石がうまく当たらず、研磨にムラが生じる場合があります。
研磨槽の中に複数の製品を入れると、製品同士がぶつかり合い、傷やへこみが発生する場合があります。
研磨会社によっては、対策として製品を保護するため、仕切りのついたバレル研磨機を所有しています。気になる場合は、依頼前にバレルに仕切りがあるかどうか確認しておきましょう。
バレル研磨で使用するアイテムの名称とその役割、アイテムの一つである「コンパウンド」が果たす役割、そして流動式のバレル研磨について紹介します。
バレル研磨で使用するアイテムは次のとおりです。アイテムは、バレル研磨ならではの名称で呼ばれる場合があります。また、バレル研磨においては、製造品のことを「ワーク」や「工作物」「パーツ」などといった名称で呼ぶことがあります。
コンパウンドには、界面活性剤や防錆剤、洗浄剤などといった成分が配合されています。主には以下のような5つの役割があります。ちなみに、コンパウンドはさまざまなタイプがあるため、製造品との相性、あるいは製品をどのように仕上げたいかによって使い分けることが大切です。
バレル研磨には、遠心式と回転式、振動式の3種類があります。
バレル研磨における遠心式は、高圧な遠心力を用いて工作物を研磨する方法です。バレル容器を高速回転させることにより流動状態を作り出し、その中で高圧な遠心力を生み出しますが、短時間で精細な研磨を行えること、自動化が容易になることなど、様々なメリットがあります。
一方、機械が高価であること、加工中にワークの状態を確認できないなどの短所もあります。遠心式に適している加工物は小物です。
c回転式は、遠心式と同じようにバレル容器を回転させ、研磨石やコンパウンドを相互運動させることによって研磨する方法です。遠心式と異なる点は、回転数と摩擦の多さです。
遠心式は高回転で多くの摩擦を生みだしますが、回転式は回転数も摩擦も少ないのが特徴です。加工時間と手間はかかりますが、その分、仕上がりは安定しています。また、機械の構造がシンプルで操作が簡単なこと、機械が安価なこともメリットです。一方、デメリットは加工時間が長いこと、自動化が困難なこと、大量生産に向いてないことです。
振動式は、バレル容器をモーターで振動させ、ワークとメディアを相互運動させることによって研磨する方法です。流動式や回転式は容器自体が回転しますが、振動式は回転ではなく振動するのが特徴です。
バレルにはボックスタイプとサークルタイプの2種類があり、加工時間の長さは回転式と遠心式の中間ぐらい、振動式に適している加工物は中物~大物です。メリットは、操作性の良さ、自動化がしやすいこと、加工中にワークの状態を確認できること。デメリットは、機械が高価なことです。
縦長型のタンクを用いて行なう研磨作業です。底面には回転盤があり、作動させると流動が発生。それを利用して混ぜていきます。タンクにはさまざまな種類があるため、用途に応じて、適当な機種やサイズのものを選択することが大切です。
「品質第一」を掲げ、バレル研磨における品質の高さを追及しているのがダイエイバレルの特徴です。回転式・振動式・遠心式のほか、GUM研磨機やサンドブラストといった研磨機も保有。目的に合わせ、さまざまな研磨依頼に対し柔軟に応じてくれるでしょう。また、自然環境へも配慮しており、研磨後の排水を自社設備で浄化。ろ過した後の鉄粉やサビなどのスラッジは、路盤材として再利用しています。
対応領域:7
自動車部品、家電機器、装飾品、通信、音響、電子、光学
早川研磨工業の特徴は、マイクロスコープを使った高精度のバレル研磨ができること。総合倍率8,000倍のマイクロスコープで表面粗さをチェックし、1㎛レベルのバリ取りも可能としています。また、工程間のチェックや最終工程での面粗さ測定を行い、高品質での研磨を目指しています。
対応領域:公式HP上に記載はありませんでした
大ロットの研磨から1個の試作品の特殊バレル研磨まで、東商技研工業は幅広く対応してくれます。研磨精度のレベルは、±3/100mm以下の公差にも対応可能。また、「ワンショット3D測定器」の導入によりミクロン単位での加工も行えます。
対応領域:6
家電部品、自動車部品、医療部品、OA機器部品、家庭雑貨、精密部品
バレル研磨は研磨会社にとって欠かせない加工技術です。3つある種類、それぞれの特徴をしっかり押さえて、バレル研磨を知っておきましょう。
安心して任せられる
研磨会社3選
三陽工業
対応領域
計8
ISO取得
主な取引先
川崎重工業/三菱重工業/ダイハツ工業/日産自動車/ブリヂストン/三菱日立パワーシステムズ
大堀研磨工業所
対応領域
計5
ISO取得
主な取引先
オークマ/ヤマザキマザック/コマツNTC/川崎重工業/三菱重工業
東京ステンレス研磨興業
※ISO9001認定を取得、公式サイト上に研磨事例が掲載されている会社の中から、対応領域の種類が多い3社を選定(2021年6月調査時点)
※情報参照元:三陽工業(https://sanyou-ind.co.jp/company/)、大堀研磨工業所(http://www.ohorikenma.co.jp/quality.html)、東京ステンレス研磨興業(http://www.tskenma.com/company/history.php)