金属や樹脂を加工する際に現れる「バリ」。今やどの設計図面を見ても「バリなきこと」と表記されており、素材加工時は欠かすことのできない作業といえます。
バリとは、機械での加工や成形工程によって現れるでっぱりのこと。放置すると製品の機能性や製品を使用する消費者に悪影響が与えられます。
バリは放置しても利点はなく、デメリットしかありません。まさに「百害あって一利なし」といえる存在です。
製品にバリが残っていると、動作部分にバリが干渉し、想定していた性能を発揮できなくなります。バリの接触している部分の摩耗や、動作によって剥がれたバリが動作部分に侵入し、故障や傷の原因になることも。製品の品質の低下を招く原因になるので、設計図面には必ず「バリなきこと」と記載されているのです。
また、バリの先端は鋭利なので、素材を加工する作業者や製品を手にする消費者に傷を負わせる可能性も。製品の安全性を確保するためにも、バリ取りを行うことは必須といえます。
加工の方法により、バリの種類は複数分類されます。主な種類は「切削加工バリ」「プレス加工バリ」「鋳造・鍛造・射出成型バリ」「ポアゾンバリ」「ロールオーバーバリ」の5つ。それぞれについて解説いたします。
切削加工バリ切削に使用する工具の刃によって発生するバリです。切り込んだ部分の端に現れ、切り込み量が多くなるほど現れるバリも大きくなります。
プレス加工バリプレス機器によって現れるバリのことです。パンチが食い込んだ入口部分が「ダレ」と呼ばれ、外に出た出口部分が「バリ」と呼ばれます。せん断加工によるバリも、このプレス加工バリに分類されます。
鋳造・鍛造・射出成型バリ金型に材料を流し込む際、金型のすき間に流れた材料が固まることで発生するバリです。
ポアゾンバリ加工機器の刃により現れるバリ。圧縮変形により刃の進行方向に対して垂直に発生するのが特徴です。ちなみに刃が食い込む時に生じるバリは「エントランスバリ」、切削作業中、側面に現れるバリは「サイドバリ」と呼ばれます。
ロールオーバーバリ切削加工の終了後、切削する方向の自由面側へ押し出されるように現れるバリです。加工機器の刃から工具が離れる際に、塑性(そせい)流動が生じることが原因。特に延性のある柔らかい金属の加工の場合、このバリは現れやすくなります。
発生を完全に抑えることは非常に難しいため、現状はバリ取りによって対応するしかありません。バリ取りは手作業か、専用の機器を使用して行われます。
手作業でのバリ取りと、機器を使ったバリ取りの方法を解説。機器で除去する方法は、機械加工・砥粒(とりゅう)加工・電解研磨・化学研磨・熱的加工の5つに分類されます。
バリ取りの方法の多くが、この手作業で対応されます。方法は、縦と横の長さを等しい寸法で切り取るC面取りが主に利用されます。
ボール盤やフライス盤など、NC装置を使ってバリ取りを行う方法です。割りピンやブレード、カッター、ブラシなど、専用のツールを取り付けてバリを取り除きます。
砥粒加工砥粒研磨材を使いバリを取り除く方法です。バレル槽の中に研磨メディアやコンパウンドを入れ、回転させてバリを取り除く「バレル研磨」。ベルトサンダーで研磨してバリを除去する「ベルト切削」。気流で砥粒を吹きかける「砥粒ジェット」などの方法が挙げられます。特によく用いられるのはバレル研磨で、作業が簡単でかつ細かい部品のバリ取りに使えるため、多くの会社で利用しています。
化学研磨化学研磨は、研磨液・基本液・水を入れた処理槽にバリを含む製品を入れ、熱を与えて化学反応を起こしてバリを取り除く方法です。
電解研磨製品を陽極、電極を陰極につなげ、電解液の中で電流を流しバリを取り除きます。
熱的加工バリ部分へ電流を流すことや、火やプラズマバリ部分にのみ当てて取り除く方法です。
設計図にある「バリなきこと」という指示の平均値は、バリの高さ0.048mm。バリの高さは研磨技術や使用する機器によって変わるため、バリ取りを依頼した会社によって製品の品質も左右するといえます。
バリ取りを依頼する際は、バリ取りに関する実績や所有する機器から、最も優れていると思われる会社を選びましょう。
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