このページでは、黒皮(ミルスケール)について説明しています。黒皮という素材の特徴や、これを除去したほうがよい場合、さらに除去するための2種類の方法についてもみていきましょう。
黒皮材とミガキ材の比較や黒皮鉄の魅力などもあわせて説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
「ミルスケース」と呼ばれることもある黒皮。表面に黒い膜をもつ鉄材のことです。意図的にほどこした塗装などとは異なり、自然発生したものであるため、見た目や状態は個々の鉄材ごとに個体差がみられます。色味や濃淡、手触りなどは鉄材一つひとつ異なりますし、ムラもみられます。
黒皮は、鉄材をおよそ1,000℃で成型後に生じる酸化被膜です。これは、温度が下がるときに、鉄材の表面が酸化することによるものです。鉄鋼材料を熱間圧延加工で製造するプロセスにおいて、自然にできる膜です。また、黒皮が付いた鉄鋼材料は「黒皮材」と呼ばれます。
外観は、黒い膜で覆われた鉄鋼材料、といったところです。この鉄鋼材料、つまり黒皮材は、寸法精度が求められる用途には適しているとはいえません。黒皮材の表面には凸凹やピンホールがあり、さらに表面の精度も低いことがその理由です。また、熱間圧延したままの材料である黒皮材は、比較的価格が安いことも特徴となっています。
黒皮材の酸化被膜、つまり黒皮は、内側の鉄との密着度合が低いです。そのため、さして強くない衝撃であっても、はがれてしまう可能性があります。本来、酸化皮膜は、金属の表面が空気と接触しないようにするための保護膜としての役割をもっています。けれども、黒皮の場合は、鉄としっかり密着しているとはいえず、したがって、錆を防ぐための保護膜としての機能は果たしていません。
さらに、密着度合が低いということは、下地に適しているとは言い難く、そのままでは塗装しにくい状態でもあります。よって、塗装する場合は、まずは黒皮を除去することが必要になります。
物理的に除去する方法です。硬度のある研磨剤の球や細かい砂などをワークの表面に噴射し、衝突させることで黒皮を取り除いていきます。ブラスト処理のなかでも、細かい球を噴射・衝突させる方法を「ショットブラスト」、そして尖った面を持つ研磨剤を噴射衝突させる方法を「グリットブラスト」と、それぞれ呼びます。
化学的に除去する方法です。黒皮材を塩酸や硫酸などの酸溶液の中につけておき、黒皮を溶かしていきます。表面処理の下処理としておこなわれることが多いプロセスです。
塗膜をほどこすことで、長期間にわたって鋼材を保護したい場合には、黒皮を除去してから塗装をおこなうようにしましょう。また、次に挙げるような構造物に対しては、細かい球を噴射および衝突させて黒皮を除去する「ショットブラスト」で黒皮を除去してある鋼材を選ぶことが大切です。
冷間圧延加工が施された鉄鋼材料のことをミガキ材と呼びます。常温で材料を圧延する処理方法なので、表面は凹凸が少なくてキレイであることが特徴です。S45CやSS400といった使用頻度の高い鉄鋼材料には、ミガキ材あるいは熱間圧延された黒皮材が使用されています。
一般的に、黒皮材よりもミガキ材のほうが価格は高いですが、必要となる加工をトータルで考えると、ミガキ材にかかるコストが黒皮材を上回るとは一概にはいえません。どちらを選ぶべきか迷っている場合には、加工コストのほか、用途や加工に要する時間など、さまざまな視点をもって検討することが大切です。
黒皮鉄には、かすかな青い光が感じられる黒い色味や色むら、あるいは凹凸などの手触りといった「素材感」があります。鉄が本来もっている味わいを感じられるところが、黒皮鉄の良さであり魅力でもあるといえます。また、時間の経過にともない、ひんぱんに触れる部分の色が濃くなったりするなどの変化も楽しめるため、愛着も増していくことでしょう。
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